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公園のベンチに座るふたり。あと数秒でふたりは口づけをかわす。異様なのは、それが元恋人同士で、その様子を影から奥さんが見ていることである。
龍平さんが目を閉じる。あと数センチというところだった。奈緒は人差し指を彼の口のところに持ってきた。
「だめ」
彼女は寂しく笑った。
「ここは、超えちゃだめ。奥さんが泣くよ」
そう言って、そっと指を離した。
「絵里さん知ってたよ。龍平さんがうちのお店に通ってること」
彼女はベンチからぴょんと立ち上がった。
「もうビックリだよ……絵里さんは速水先生とデートしてるし、龍平さんはキャバクラ通ってるし……」
そして、くるくると回って彼の前に着地した。
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