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「俺も100頑張ってるからそれも半分こで50ずつ。50+50=100でプラマイゼロだ」
彼はまた皿を戻し始めた。
「嫌なことがあったときもそう。たとえ50ダメージ受けたとしても、ふたりで協力すればゼロになるかもしれない……足し算と引き算の繰り返しだよ」
皿を戻し終えた龍平さんは食器棚の扉を閉めた。私は納得したような、そうでないような気分で曖昧に頷いた。
「それはそうと瑞希ちゃん、そろそろ出た方がいいんじゃないか?」
「えっ」
振り向くと、壁時計は9時を指そうとしていた。
「やっば!のんびりしすぎた!龍平さんお先です!」
私はエプロンを丸めて籠に放り投げ、手荷物を取って店を飛び出した。
「はーい、彼氏さんによろしくー」
龍平さんは芯の抜けた声で私を見送った。
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