カナリア

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キャラ カナリア 主人公。 記憶をなくして踊り場にいる男。踊り場からどこにも行けない。 博士 大勢のための1つの犠牲を屁とも思わない。腕は確か。 助手A もう一人の主人公。 博士に忠実な助手だが、カナリアにしだいに恋を抱きはじめる。 目覚めるとそこは屋外階段の踊り場だった。 ぼくはのろのろと起きだした。 どこも痛い所はないしお腹も減っていない。 どうやら高層ビルのようだ。街が箱庭に見える。 こんな高い所で何をしていたのか。 まったく思い出せない。 建物に入るためのドアが背後にある。 けれどドアは開かなかった。 他の階のドアなら、そう思って階段を降りると次の踊り場手前で階段は終わっていた。 急ぎ足で上に上ると、やはり次の踊り場手前で階段は途切れていた。 つまりぼくは高層ビルの上階、一階分だけある踊り場にいるのだ。 コンクリートの階段とアルミの手すり。これが全てだ。 大声を出しても地上の街には届かない。 ぼくは叫んで絶望して疲れて目を閉じた。 朝焼けに染まる街がキレイだな……ぼくは睡魔に沈んだ。 「よし。今日も大気の中和剤は完璧だ。カナリアはよく鳴いて元気だった。政府に連絡して外出 禁止解除を伝えてくれ。あと、カナリアが寝たら世話を頼む。いつもの満腹薬を注入してくれ」 隣国の核ボタンが押されて放射能に犯されている。 けれどわが国は優秀な博士のおかげで放射能清浄機が発明された。 効果は24時間。 その効果を毎日確認するためにカナリアと呼ばれる男が選ばれてビルの踊り場で飼われている。 カナリアが元気な限り放射能清浄機は効いているのだ。 そうして人々は安心して外に出て活動ができる。 わたしは博士の助手。 研究の他に政府との連絡、カナリアの世話をしている。 カナリアは毎朝1時間ほど起きて、後は薬が効いて寝ているのでその間に世話をする。 鉄のドアを開けるとカナリアが眠っていた。 女のわたしよりもキレイな顔をしている。このカナリアがわたしの名を呼ぶ時はどんな声なのだろう。 カナリアを踊り場から逃がして、そっとわたしの部屋に連れて行きたいと思った。 密かに生まれた恋の予感。
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