風邪の話

3/3
4人が本棚に入れています
本棚に追加
/35ページ
 ショウガなんかも入れたりして、風邪ひきによさそうなメニューに仕上げる。  その時私は気づかなかったが、お母さんと蓮は、とても心配そうな顔で湊を見ていた。  多分、味は大丈夫か? とか。ケガしないか? とかの心配じゃない。  私がから元気でいるのを知っているから。  それにも気づかずに、どんぶりに入れて三人分をテーブルに並べる。 「さ、できたよー」  少し赤い顔をしながら座る。  二人も、お箸を持ってそうめんをすする。  その後も、洗い物をして、自分がやるというお母さんを部屋に押しのけて洗濯などをして、ようやく部屋に戻る。 そのまま布団に入り、一人弱音を吐き続ける。 「辛い……もうヤダ……学校休みたい……」 次々出てくる弱音は、顔と密着している枕に吸収されていく。 「でも頑張らなきゃ……迷惑かけないようにしなきゃ……お世話になってる分返さなきゃ……」 きっと、お母さんが聞いたら「家族なんだから気にしないの」とか言いそうだが、それでも気にしてしまうのが、釘宮湊という人間だった。 私は、お母さんだけではなく、蓮にもいろんなところでお世話になりっぱなしだ。 だから、こういう時にこそ恩を返すようにしたいと思っていた。 でも、これからもっと迷惑をかけてしまう。 だから、私は湊の丸まった背中を撫でるようにして声をかける。 『明日、絶対に学校休みな』 「無理だよ……心配かけちゃう」 『心配ならもうかけてるよ。でも、学校休まないともっと心配かける』 「そんなの……わかんないじゃん」 『わかるよ。無理に学校に行って、もっと大変なことになる』 そういうと、湊は黙った。 そして、小さく「わかった」と言って眠りについた。 翌日、湊は私の忠告通りに学校を休んだ。 休みの報告を聞いたお母さんと蓮の安心した顔が、私の心に残った。 本当なら、風邪をこじらせて肺炎になり、入院する羽目になるところだったのだ。 そして、その入院で、私は受験勉強もままならなくなってしまう。 「これで、万事解決。というわけかい?」 おそらくは。 「まあ、今の段階ならまだ治るだろうしね」 そうだよ。まだ引き始めだったろうし、治れば大丈夫だ。 「………」 何か言いたげな男を横目に、私は一人達成感に満ち溢れていた。 このままいけば、私は私を救えるはずだと
/35ページ

最初のコメントを投稿しよう!