4人が本棚に入れています
本棚に追加
/35ページ
ショウガなんかも入れたりして、風邪ひきによさそうなメニューに仕上げる。
その時私は気づかなかったが、お母さんと蓮は、とても心配そうな顔で湊を見ていた。
多分、味は大丈夫か? とか。ケガしないか? とかの心配じゃない。
私がから元気でいるのを知っているから。
それにも気づかずに、どんぶりに入れて三人分をテーブルに並べる。
「さ、できたよー」
少し赤い顔をしながら座る。
二人も、お箸を持ってそうめんをすする。
その後も、洗い物をして、自分がやるというお母さんを部屋に押しのけて洗濯などをして、ようやく部屋に戻る。
そのまま布団に入り、一人弱音を吐き続ける。
「辛い……もうヤダ……学校休みたい……」
次々出てくる弱音は、顔と密着している枕に吸収されていく。
「でも頑張らなきゃ……迷惑かけないようにしなきゃ……お世話になってる分返さなきゃ……」
きっと、お母さんが聞いたら「家族なんだから気にしないの」とか言いそうだが、それでも気にしてしまうのが、釘宮湊という人間だった。
私は、お母さんだけではなく、蓮にもいろんなところでお世話になりっぱなしだ。
だから、こういう時にこそ恩を返すようにしたいと思っていた。
でも、これからもっと迷惑をかけてしまう。
だから、私は湊の丸まった背中を撫でるようにして声をかける。
『明日、絶対に学校休みな』
「無理だよ……心配かけちゃう」
『心配ならもうかけてるよ。でも、学校休まないともっと心配かける』
「そんなの……わかんないじゃん」
『わかるよ。無理に学校に行って、もっと大変なことになる』
そういうと、湊は黙った。
そして、小さく「わかった」と言って眠りについた。
翌日、湊は私の忠告通りに学校を休んだ。
休みの報告を聞いたお母さんと蓮の安心した顔が、私の心に残った。
本当なら、風邪をこじらせて肺炎になり、入院する羽目になるところだったのだ。
そして、その入院で、私は受験勉強もままならなくなってしまう。
「これで、万事解決。というわけかい?」
おそらくは。
「まあ、今の段階ならまだ治るだろうしね」
そうだよ。まだ引き始めだったろうし、治れば大丈夫だ。
「………」
何か言いたげな男を横目に、私は一人達成感に満ち溢れていた。
このままいけば、私は私を救えるはずだと
最初のコメントを投稿しよう!