変わりゆくもの

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一つ、大きなやり直しを経て、私は、湊を助けることができると意気込んでいた。 今まで以上に、気にしていなかったことにさえ声をかけるようになり、彼女は私が辿りたかった世界をたどっているはずだ。 『湊ー起きなー』 私は、いつものように湊に声をかける。 しかし、今日は起きる気配がなかった。 まあ、湊だしそんなこともあるよね。  私は、湊を起こすのに、その後一分近くの時間を使った。 そして、朝食を食べるのを見届けた後、学校へ向かう。 そして、いつものように小さなことでも気を付けて思い出し、警告を下す。 こうすることで、最近では「どんくさくなくなったね」とか「最近表情明るいね」と周りからいわれるようになっていた。 私は死んでいる身ではあるけれど、湊がそういわれているのを見て、私はまるで自分自身が言われているようでうれしかった。 「頬がみっともなく緩んでいるよ」 うるさいな。 「……君は、今の彼女を見てどう思うかい?」 湊を見て? うん。なんだろうね。彼女は、着実にいい方向へ進んでると思う。私の一生みたいに暗くはない。 彼女の一生は、私と違って死んでも肯定できるものになるんじゃないかな。 「君は肯定しているのかい?」  私は、それでよしとしているよ。 貴方も言った通りこれは『ある種のやり直し』。私自身の、本当のやり直しじゃない。 「そうか。わかっているみたいだね」 うん。わかってる。 これが、私が死ぬ直前に願った人生。 これは、私が味わうことはできない人生。 これは……釘宮湊の夢物語。 「どうしたんだい? 涙を流したりして」 肉体がないのに涙って出るんだぁ、へぇ。 「さぁ。わかっているなら、エピローグまで頑張ってみたまえ。まだまだあるだろう?」 もっちろん。 私は、彼に返事をして、湊の背中を見守り続けた。 私は、私が死ぬあの事故まで、彼女を助け続ける。
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