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抗議の声をあげる首に、引っこ抜いたばかりのイヤホンをぶら下げた《司書》は声をひそめて、
「吠え声が聞こえた。食肉目に近いけど、ちょっと違った」
「違ったって、なにが……」
「わたしの歌を歌ってた。たぶん『ぴゅーまさん』、しかも群れてるみたい。ここを出よう、今シートベルトするからね……」
“それは美しき嘘……それは完全なる否認……信じるに足る美しき偽り……”
さっきまで《司書》のへたくそな唇が乗せていたメロディの断片が、獣の響きとともに荒れ地を震わせる。サーティーセカンズトゥマーズの「A Beautiful Lie」。その歌声はまるで、遠吠えのように。内心で舌打ちしつつ、顎の下へシートベルトが通されるのを絞首刑を受ける罪人のように受け入れる。フロントガラスから見える陽は傾きつつあった。
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