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女性と別れた後、彼女の方は会合に顔を見せなくなったが、景生は参加を続けた。
会合への参加回数を重ねるうち、一人の男性に妙に懐かれるようになった。最初は偶々隣席になっただけだったが、何度か話すうち、男性は必ず景生の隣に座るようになった。
男性は景生を辟易させた。彼が口にすることといったら、呪詛に近い、「社会」や「普通の人々」に対する批判ばかりだった。気持ちが分かるだけに彼の言葉を否定することはあまりしなかったが、会が終わり、仲間たちと別れた後、帰りの電車に揺られながら仕事帰り以上に疲労している自分に気付き、会合への参加の意義を度々疑うことになった。
それでも、惰性と孤独への恐れからコミュニティとの繋がりを続けた景生だったが、ある事がきっかけでその縁を絶った。
いつも通りのオフ会の最中、いつも通りに景生の隣に座った男性が席を離れた頃合いで仲間の一人が景生をラインのグループに招待した。その後、いつも通りに解散すると、一人での電車での帰途、早速、トークルームに入室した。そこに書き込まれていたのは専ら例の男性の悪口だった。男性に付きまとわれる景生に同情する声もあったが、それは景生への純粋な労りではなく男性への攻撃の一つでしかなかった。一番口汚く罵る人物が仲間内で最も愛想の良い人間である事実に景生は嫌悪感を超えて恐怖を感じ、最寄り駅に到着する前にコミュニティからの脱会を決意した。
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