花ほころぶ

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あの時と同じ戌年が巡ってきたのだ。 その年も、咲子はいつもの雑貨屋へと向かった。 もうお年玉ではなかったけれど、自分の500円玉を手にしていた。 店主は随分と年を重ねていて、店の中の物も年を追うごとに少なくなってきていた。 寂しげにぽつんと存在していたその犬の置物を買った。 自分の部屋にある、並んだ干支の置物。 最初の犬の置物の隣に今年買った犬を置いた。 最初のものより今年買ったものの方が少し大きいように感じられた。 それからまた日々は過ぎた。 あの頃よりも随分と落ち着いた日々を過ごせるようになったと、咲子は思えていた。
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