0人が本棚に入れています
本棚に追加
そんな思い出が遠い日のことのように思われたが、まだ1年も経ってはいなかった。
ただ、宇宙を漂っているような落ち着かない気分で過ぎていった日々は早く感じられた。
そうしてまたお正月がやってこようとしていた、その夜のこと。
咲子は飽きもせずに出窓から夜空を眺めていた。
ふと、ベッドサイドにある犬の置物のしっぽが揺れたような気がして咲子はそちらを向く。
幾度か瞬きをして犬の置物を手に取り、見つめた。
すると、犬の置物と目が合う。
「えっ?」
咲子は思わず声を上げて、犬の置物を落としてしまった。
幸い犬の置物は布団の上に落ちて、少し跳ねると横向きに転がった。
咲子は上がった心拍数を落ち着けるように深呼吸を繰り返している、すると。
『あー、びっくりした』
そんな声が聞こえた。
最初のコメントを投稿しよう!