花ほころぶ

4/14
前へ
/14ページ
次へ
「え?」 先程までは置物だったはずの犬が、いつの間にか犬そのものになっていた。 咲子は驚き、その犬を見つめる。 それこそサイズは置物の時と変わらないものの、置物とは明らかに様子が違っていた。 「これ、どういう、こと?」 咲子がなんとか絞りだす言葉は静寂と混ざってしまって、すぐに消えてしまう。 『ねえねえ』 驚いている咲子に構わず、犬は言葉をかけてくる。 咲子は握り締めていた手をゆっくりと開いた。 なぜならその声が、じんわりと暖かい日の光のように咲子を落ち着かせたからだった。 「なあに?」 『ねえねえ覚えてる?』 「何を?」 『君が生まれた時のこと』
/14ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加