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「え?」
先程までは置物だったはずの犬が、いつの間にか犬そのものになっていた。
咲子は驚き、その犬を見つめる。
それこそサイズは置物の時と変わらないものの、置物とは明らかに様子が違っていた。
「これ、どういう、こと?」
咲子がなんとか絞りだす言葉は静寂と混ざってしまって、すぐに消えてしまう。
『ねえねえ』
驚いている咲子に構わず、犬は言葉をかけてくる。
咲子は握り締めていた手をゆっくりと開いた。
なぜならその声が、じんわりと暖かい日の光のように咲子を落ち着かせたからだった。
「なあに?」
『ねえねえ覚えてる?』
「何を?」
『君が生まれた時のこと』
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