終戦

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2月の夜。一人暮らしのボロアパートは暖房をつけていても冷え冷えとしている。 毛布を体中に巻いて、寒さをしのいでいると、不意に呼び鈴が鳴った。 億劫な気持ちを抱きながらもやっとの思いで腰を上げ玄関に行くと、宅急便のお兄さんが小箱をもってニコニコとした笑顔で現れた。このクソ寒い中本当によくやると、心から感心してしまう。 届けられたのは、一つのティッシュ箱くらいの大きさの箱だった。 寒さから逃げるようにいそいそと部屋に戻り、かじかんだ手でその箱を開けると、そこには1本のネクタイと手紙が添えられていた。 手紙を取り出して開くと、そこには妙に小さな文字で、こう書かれてあった。 『これであおいこ!来年こそは勝つからな!覚えときや!』 その女子高生らしいかわいらしい文字を見ながら、俺はこう思うのだった。 来年は不戦勝でいいかな、と。
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