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てっきり、いきなり唱え出した祝詞についてだと思って説明し出した百々だったが、史生は「違うわよ」ときっぱり否定した。
「祝詞くらい、聞いたことがあるわよ。こっちは神社の家の子なんだから。」
「だよねえ。」
「どこまで天然なの、あんた。」
史生に睨まれて、百々は焦った。
やっと仲良くなれたかと思ったのに、また史生を不快にさせてしまったのかと、困惑する。
何を尋ねられているかわからない様子の百々に、史生はますますむっとした顔になった。
「さっきのって言ってるでしょう!動けなかったの!なんか・・・なんか、押さえつけられてるっていうか、体より心が先に金縛りみたいになって固まったっていうか・・・」
史生にも東雲にも、罔象女神の力は見えない。
もちろん、百々とて見えているわけではない。
神の力は見えるものではない、在るのを感じるのだ。
史生がそのことを指しているのだと知って、百々はほっとした。
「最初からそう言ってよ。しぃちゃん、言葉が足らなすぎ。」
「どこが!あんた、ホント、どこまで天然なのよ!」
高校時代の友人たちからもよく言われた言葉に、百々はえへへと笑った。
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