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「百々も免許だけは取ったんだよね。」
「一応ねー。身分証代わりにもなるし。」
「百々なのに、よく取れたよね。」
「のの子、あんた、百々のこと言えないでしょ。何時間オーバーしたのよ。しかも、学科もあってさ。私らは、諦めてたよ、あんたの免許のこと。ああ、のの子のお父さんお母さんは、自動車学校というどぶにお金を捨てたんだなあって。」
「それが友達の言うことかー!」
怒ったのの子が、めっちょんに食ってかかる。
楽しそうな笑い声が起こる。
そんな中、担任が入ってきて、最後の挨拶をした。
感動的な話なのかもしれないが、18の彼ら彼女らの心を深く揺さぶることもなく、表面上わずかにざわめかせて終わった。
それでも、高校生活で大したことも起きず、それなりに仲のいい学級でこれたのは、百々をはじめこの学級の生徒たちにとっては、幸せなことだった。
卒業式の後、担任を囲んでちょっとしたサプライズをしようということになっているので、生徒たちはそのことに気をとられ、その後体育館の外の廊下に移動して入場前の整列をするまで、ぺちゃくちゃとしゃべって「うるさいぞ、卒業生!」と他の学級の先生から注意された。
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