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お使い先が神社ならば、一子の言う「若い男性」というのはそこの神社の神主か、もしくは跡継ぎのことだろうか。
どちらにしろ、もったいぶった言い方である。
「そちらの神社がね、管理されていたようなのよ。」
小学校が建つ前に。
かつてそこにあった神社を。
「でも、あちらも代替わりなさっておいででしょう?調べておいてくださるということでしたけれど、ちゃんとお話を聞けたらいいわねえ。」
60年前のことだ、当時の神職はもう存命ではないかもしれない。
資料が残っていれば助かるのだが、そこは一子もわからないらしい。
「それでも、あなたは私の曾孫で、次代ですもの。」
たとえ、資料が残っていないとしても、できることがあると、一子は言った。
「資料がなければ、神様にお伺いなさいな。」
「神様にかあ。うーん。」
何をーーどうやってーー
それを、一子は言わない。
百々も聞かない。
それは形にして伝えられるような技術ではないし、手取り足取り教えられる型ももたないからだ。
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