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だからといって香佑焔に責められていいということではないが、いつもと変わらず香佑焔は見ていてくれるのだという安心感に、百々はほっとした。
普段は小うるさく感じる香佑焔のお小言がないというのは、やはりどうにも変な感じなのだが。
拝殿の造りは、あまり特徴的な装飾もなく、しかし冬季間の天候に配慮しているのか、手を合わせて拝する拝殿前に屋根だけでなく囲いも取り付けていた。
そこに百々が一歩足を踏み入れた瞬間、どこからともなく楽の音が響いてきた。
静まり返っていた空間に突然響き渡る雅楽に、百々の心臓がどきんと跳ねる。
「ひゃあっ!?」
もしかして、拝殿の中でちょうど祈祷か何かが始まったのか、それとも練習している人がいるのかと、百々は中を覗き込むが、誰もいない。
「え、え、なんで?」
「・・・あれでは?」
きょろきょろと見回した東雲が指差す先に、スピーカーと何か小さな機械が取り付けてあるのを、百々も見つけた。
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