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いつのまにか、香佑焔が百々の後方、拝殿の入り口に立ち入らない場所に出現し、恭しく膝をついて頭を垂れていた。
今回、百々のことを助けないと決めた香佑焔でも、この気配に黙ってポケットの御守りの中に収まっているわけにはいかなかったらしい。
百々は、香佑焔よりも、二つの力の気配に浸った。
それは、とても似ていて豊かで深い。
ああーーそうか。
「繋がっているものね・・・罔象女神様と豊受大神様は。」
かつて、火倶土を産み、その炎で身を焼かれて苦しみ死んだ伊邪那美命が、苦痛で迸らせた尿から生まれたという罔象女神。
その罔象女神の次に同様に生まれたのが、稚産霊(わくむすび)。
豊受大神は、この稚産霊の娘神であると、古事記には記されている。
つまりは、力の生まれ出づる源が一緒なのだ。
二つの力の交歓は、百々の感覚では非常にゆったりしていたが、時間にすると一瞬だったらしい。
同時に気配が溶けるように消え、手を合わせていた百々が一礼するのと東雲が一礼するのが、ほぼ同時だった。
つまり、さほど不自然な長さではなかったということである。
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