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二人が動き出すと、またしても楽の音が流れる。
センサーが反応してのことなのだろうが、やはり驚いてしまう。
「自分が以前お詣りにうかがったときには、ありませんでした。」
拝殿を出て社務所に向かいながら、東雲が感慨深げに言った。
「東雲さんは、いつ頃ここに来たんですか。」
「もう5年以上前になります。」
その頃の百々は、まだ中学生だ。
東雲の朱印集めの趣味は、その頃には既に始まっていたらしい。
二人は、社務所を覗き込み、声をかけた。
そこには、東雲と大して年齢の変わらない30代くらいの神職の男性が座っていた。
佐々多良神社と違い、日常的に巫女を雇う必要がないのだろう。
それくらいの規模である。
神職の常駐しない神社に比べれば大きいが、複数の神職で神事を執り行うほど広くない。
御守りですかと尋ねられ、百々は、自分の名前を告げた。
「ああ、話はうかがっています。どうぞ、そちらの入り口に回ってください。」
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