卒業

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寒い体育館に、吹奏楽部の演奏に合わせて入場する。 在校生席、保護者席、来賓席、職員席で、体育館内はぎっしりだった。 ステージ前の卒業生の席まで、二列で歩いていく。 一学年400人ほどの学校なので、さすがに一人ひとりの証書授与はなかった。 学級ごとに立ち上がって、その場で呼名に返事をする。 ステージに上がるのは、代表に選ばれた生徒だけだ。 百々は、自分の席の前で立って、「はい!」と返事をする以外はそれを見ている側である。 成績は、高校生活通して、常に中の上から上の下。 教師からは進学をずっと勧められてきたが、百々にその意思はなかった。 やがて、校長やPTA会長、来賓の挨拶が終わり、祝電が披露され、卒業生の合唱になった。 歌は、毎年変わる。 今年は、比較的昔の混声四部合唱曲が選ばれた。 ここでも、百々は無理なくアルトパートを歌う。 百々自身、高音パートで高い声出すより楽でよかった程度の感慨しかない。
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