未来に遺すもの

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「まさか、自分があそこで働くとは思ってもみませんでした。」 襟足を短く刈り込んだ頭をがしがし掻きながら、田村は頭を下げた。 ここは、四屋敷邸の一子の私室だった。 フェンス越しに小学校の用務員と会った百々は、田村に簡単にこれまでの話を打ち明けた。 何人かの子供が、この辺りで神様を見たと話したこと。 それを聞いた若い女性教員が、警察にそれを話したこと。 その警察官と一緒に、自分も一度ここに訪れたこと。 「ああ!話は聞いていました。え、じゃあ、警察学校の方ですか。」 散歩がてら小学校まで来た百々は、当然私服である。 それどころか、警察官でもなんでもない。 百々は、胃がきゅうっと締め付けられるような緊張と焦りを覚えながら、どうにか話を続けた。 「それより、ここの小学校の場所、昔は神社があって、そこを管理していた地主さんが田村さんだってことも、うかがってたんです。」 「そこまで調べて・・・」 百々は自分のことを警察官とは明言しなかったが、調べたという事実にどうやら田村は百々がやはり警察関係者だと判断したらしい。
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