鉦舟神社(かなふねじんじゃ)

3/42
12554人が本棚に入れています
本棚に追加
/912ページ
県北部、いわゆる地元では県北(けんぽく)と呼ばれるその地域に、百々が行かなければならない神社があった。 そこの主祭神が、罔象女神なのである。 罔象女神、または弥都波能売神、水波能売命。 今後、その女神から力を借り、時に護ってもらうために、正しく挨拶をして許しを得てくることが、百々に最初に課せられた修行だった。 三年間下宿していた佐多家から戻ってきたその日に、百々は一子にどの女神様にお願いすることにしたのか尋ねられた。 そこで百々が罔象女神の名を挙げると、一子は「ちょっと待っていらっしゃいな。」と立ち上がり、自分の文机の横の棚の引き出しを開けた。 そこから、何やら書きつけのようなものを出してしばらく見ていたが、やがて顔をあげると百々にある神社の名を告げたのである。 それが、今回百々が行く、罔象女神が主祭神の神社だ。 「百々ちゃんはまだいいですよ。私なんかは、京都までわざわざ行ってきたのよ。新幹線なんてない時代でしたから、大変でした。」
/912ページ

最初のコメントを投稿しよう!