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「わかったよ・・・しぃちゃん、わざとじゃないみたいだし、それ以外のことはその先輩に話してないんだよね?」
話すも何も、あと史生が言えることは、四屋敷付近の住所くらいだろう。
百々が一子とともに毎朝回っている辻のことは、四屋敷以外には内緒にしているし、一子も百々に辻のことを説明してくれていない。
昔から四屋敷の当主はここを回っているんですよ、くらいだ。
近所の人は、そこが一子の散歩コースだ程度の認識だろうと百々は思っている。
「他に言えることなんてないけど、こっちが口を滑らしちゃったもんで、とにかくしつこさが5割増になっちゃって。だから、一応聞いておくって言っちゃった。」
「誰に?何を?」
「あんたに!辻のことを!今、聞いてるでしょ。」
「え、しぃちゃん、これって聞き取り!?私に謝ってるだけじゃないの?」
「謝ってるわよ!それと、辻のことをあんたと話したから、聞き取ったってことでいいでしょ!でもって、何の情報もなかったって言っておくから!・・・・・・一応、あんたのひいおばあちゃんにも謝っておいて。」
ぼそりと付け足された謝罪、これが史生の今日一番言いたかったことなのかもしれない。
四屋敷の当主は、まだ百々ではない。
一子なのだ。
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