辻に潜む

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一子が茶を淹れるのを、百々は黙って見ていた。 一子から湯飲みを差し出され、百々は一口飲んだ。 温かいお茶って、どうしてこんなにほっこりするんだろうと、一子の怒りを感じ取って強張りかけていた百々の肩から少しだけ力が抜ける。 「私はネットというものはよくわかりませんけれど、きっと大層便利で、大層無責任なものなのねえ。」 誉めたと思ったら、すぐに皮肉る。 「だって、書き込みとかいうものは、どこの誰が書いたのかわからないようになっていて、それを誰が読んだとか、何人くらい見たとか、本当か嘘かなんて、わからないのでしょう?」 「うん。そこは、ちゃんと自分で考えて判断しなさいって、高校の授業で習った気がする。」 いまや情報教育は学校の授業の一環足りうる。 パソコンの使い方だけではない、ネットに潜む危険性やマナーといったものまで学習内容だ。 しかし、自分も含め友人たちは皆、そんなの当たり前だよねなどと軽く聞き流していた気がする。 まさに対岸の火事のような気持ちだったのだ。
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