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「これから話すことは、あなただけでなく香佑焔様にも聞いていただいた方がよろしいかしら。」
一子の言葉に反応するように、百々のやや斜め後方にふわりと香佑焔が姿を現す。
いつもの御守りから出てくるのではない。
元々、香佑焔の本体は、この四屋敷の敷地内になるのだ。
現れた香佑焔は、無言で膝を折って座った。
「百々ちゃん。あなたが罔象女神様にお護りくださるようお願いして戻ってきてから、毎日私とお散歩していますね。」
「うん。」
早朝の散歩は、季節も天候も問わない。
どのような風雨の日でも、早朝が無理なら正午、夕方、時には夜中となっても必ず行われる。
そのコースは、決まっていた。
四屋敷邸を出て右に曲がり、無造作に何も刻まれていない石が置いてある辻まで来ると手を合わせ、右に曲がる。
新興住宅地を過ぎ、同じような辻でまたも転がっている石に手を合わせてから右へ。
そこから商店街に向かって歩き、店の前を通り抜けていく。
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