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次の辻は、目印になるものが何もない。
そこでも手を合わせると右に曲がる。
少し行くと、この地域に古くからある寺、大泉寺の前を通る。
すると、一子は道を外れ、境内に入り、門の近くにある石の地蔵尊に手を合わせる。
本堂にはお詣りに行かず、ただ地蔵尊のみに祈り、再び道へ。
四つ目の辻を曲がるとそこは。
「香佑焔が大おばあちゃんに閉じ込められていた神社だ。」
百々が口にすると、香佑焔はむっとした表情を浮かべたが無言だった。
かつて稲荷の神に遣えていた小さな神社が無人となり、荒れて心ない人間によって穢され、それを怒った香佑焔は人を祟り呪う存在になった。
神使の立場から、堕ちたのだ。
己が遣えていた神社を離れ、悪神、怪異の類いと成り果てようとした香佑焔を、やはり無人の古い社へと誘い込み、封じたのは一子だった。
封じたその日から千日、毎日訪れ祈り語りかけ、香佑焔を元の姿に戻した。
堕ちた香佑焔の姿は、腐臭を吐き呪いの火種を撒き散らす、浅ましくおぞましい姿だったと百々は話にだけは聞いていた。
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