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友人らの中には、合唱の途中で泣き出してしまう子もいたが、これを歌って全校で校歌を歌ったら、式が終わって卒業しちゃうんだなあと、ぼーっと考えていた百々に涙はなかった。
退場し、級友らと担任を待ち構えて、記念撮影をし、プレゼントを渡した。
玄関から門までは、1,2年生たちが部活動や生徒会の先輩たちを待ち構えていた。
そんな中、親友たちと別れた百々は、いつもと変わらず自転車に乗って学校を後にした。
式には母が来ていた。
他の家庭のように朝玄関前の卒業証書授与式の立て看板の前で写真を撮ったが、式の後は一緒に帰る約束をしていない。
こんな日も、百々には神社が待っているのだ。
『宮司も言っていたではないか。』
コートに下の制服のポケットに入ってる御守りから、香佑焔の声が百々の頭の中に響いてくる。
『今日くらいは、家族で卒業を祝ってくるといいと。』
「けど、佐々多良神社で働くのも、あと数日なんだもん。ちょっとは頑張らなくちゃって思わない?」
ペダルを踏みこみながら3月の冷たい空気を深く吸い込むと、つきりと肺が痛い。
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