12563人が本棚に入れています
本棚に追加
/912ページ
それでも、やろうとしたとことに、久保の妄執を見た気がした。
「もしかすると。」
一子が、ぽつりと呟く。
「『解』と刻もうとしたのかもしれません。」
解。
結んでいるものをほどく、ばらばらにする、ほぐす。
それ以外に、禁じているものから解放する、縛り付けているものから解き放つという意味があるのだと、一子は口にした。
「何の力もない素人が、時をかけて封じ続け浄化し続けていたものを簡単に解き放つことはできないでしょう。でも、きっかけにはなる。今回、あの青年の肉体を使って、あれは外に出ようとしましたでしょ?」
ただ、完全に解放される前に、久保の肉体がもたなかっただろうと一子は推測した。
石に触れ、体に憑かれ、百々に呪詛のごとき言葉を投げつけ会話しただけで、久保の肉体は入院が必要なほど衰弱していた。
外傷がなく、痩せていても元々健康だったので、ある程度回復すれば退院できる程度で済んだが。
「体が壊れるのが先か、心が壊れるのが先か。とにかく、依りしろとなる彼の体がたもてなくては、あれは復活できなかったでしょうねえ。」
最初のコメントを投稿しよう!