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香佑焔に育ててもらった記憶は私にだってないもんと心の中で抗議しながら、百々は東雲を見つめた。
直立不動だった東雲が、そのまま直角に体を折り、頭を下げる。
「こんな状況で申し込むことではないと思っています。しかし、あのような話を聞き、百々さんを狙う男がいるのは、警察官としてだけでなく一人の男として到底容認できない自分を、これ以上誤魔化すことはできません。自分にこれからもずっと百々さんを守らせてください。」
ようするに、高見のおじさまが言ったみたいな人と私が結婚するなんて絶対に嫌だって思って、勇気を出してくれたってことだよね、東雲さん、と百々は堅苦しい言葉の意味をどうにか読み解いた。
そして、自分の気持ちに問いかける。
結婚するならーーお父さんとお母さんみたいに家族になるとしたらーー
百々からも、一歩東雲に近づく。
その気配に、東雲が顔を上げた。
頭をあげると東雲さん姿勢いいからやっぱり背がすごく高いなあとぼんやり見上げながら、百々は自分の気持ちを言葉にした。
「私も・・・東雲さんと結婚したいです。」
背後の香佑焔が、ふんわりと笑いながら社の中に消える気配がした。
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