呼ばれ這い出るもの

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庭から戻った百々の目の前の縁側に、固く絞ったタオルと新しいソックスが置いてあった。 すっと背を向ける一子の式神を見てしまい、百々は赤くならざるをえなかった。 自分の行動は、結局曾祖母に見透かされて世話を焼かれるのだと痛感する。 百々はありがたく汚れたソックスを脱ぎ、足を拭いて、新しいものを履いた。 東雲は、縁側の外に置いてあったサンダルを無断で借用しましたと頭を下げたが、むしろそれが普通だよねと百々の顔の赤みはいっこうに取れない。 東雲の求婚に、自分もと答えた百々だが、二人はその後、この話は今頭を悩ませている件が終わるまでしばらくは、ということになった。 なので、戻るときも手の一つも繋がなければ、当然のことながらそれ以上の身体接触はなかった。 互いの間にあったのは、告白と返事、記憶にしか残らない言葉での約束。 それでも、百々は不思議と気持ちが落ち着いていた。 それどころか、あまりに自然に受け止め、受け入れてしまったことに、改めて自分も東雲のことがこんなに好きで、一緒にいることが当たり前になっていたんだなあと思った。
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