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「それで、用件ですけれども。ほんの少しだけ、こちらにお詣りさせていただければよろしいんですの。」
本来なら昼間に来るべきですのにねえと、言葉は申し訳なさそうな内容だが、にっこり笑ってそう告げる一子に悪びれた様子はない。
晴樹の方が、ばーちゃん我が儘でご迷惑をおかけします、などと頭を下げる。
「いえ、どうかお気になさらずに。むしろ、うちが四屋敷さんのお役に立てて光栄です。」
先頃の厄介事関連なのでしょうと尋ねられ、一子は正直にそうなのですと答えた。
この宮司も、一子が四屋敷に対してよからぬことをしようとしている者がいると告げた会合に出席していた一人だ。
「佐々多良神社でなくうちに来られたということは、それなりに意味があるということで合っておりますか。」
「ええ。こちらでなければならないのです。時間があまりありませんので、お礼はまた後程改めて。」
詳しく聞きたそうな宮司に軽く一礼すると、一子と晴樹はそのまま拜殿まで進んだ。
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