冴木晴樹(さえきはるき)

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「こちら、あまり大きくないでしょう?」 拜殿の前まで来た一子は、周囲をキョロキョロと見回す晴樹にいたずらっぽく言った。 「ばあちゃん、神様の前で失礼だよな。」 「ほほほ、神様がどうのと言っているわけではありませんよ。でもね、こちら、きちんとした神社なのよ。」 こちら、伊勢神宮と関わりのある神社ですものーー 伊勢神宮の名が出たところをみると、それがこの神社を時間外に参拝しに来た理由なのだろう。 「さあ、お詣りいたしましょう。特にあなた、晴樹。一度手を合わせたら、私がいいと言うまで目を開けても手を離してもいけませんよ。」 「それ、百々に必要なんだよな。」 「ええ、とても。」 ならいいやと細かいことを聞かずに、晴樹は二度お辞儀をし、二度手を鳴らし、そのまま目を閉じた。 迷いのないその行動に、一子の口元に微笑みが浮かぶ。 本当によい子を残していってくれたーー 今、この刻限によくこの子を居合わせてくれたーー あっぱれですよーー娘 心の中で亡き娘を誉めると、一子は作法通りに頭を下げ、手を打ち鳴らした。
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