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百々は、スマホをポケットに入れ直した。
少しでも会話が聞こえていてくれたらいいと思う。
すぐ見えるところにいなくても、繋がっていると思えたら安心できる。
「無理しないでください。できれば、史生さんを連れて出てきてくれたらそれが一番いいです。」
むろん、そんな簡単にいくくらいなら、弘雄も最初から史生を連れ込むようなことはしないだろう。
どうして史生はおとなしく連れていかれたのだろうと、百々は心配していた。
薬を使われたのだろうか、刃物などの凶器で脅されたのだろうか。
それとも、自分で解決してやると自ら飛び込んだのだろうか。
「行けますか。」
「はい!」
今度こそ、百々は外に出た。
周囲の家から二人を不審そうに見る目は、今のところはない。
弘雄の自宅前まで来た百々は、インターホンを押した。
レンズがついているので、中で来客を確認できるタイプだ。
すぐに反応はなかった。
やがて、玄関の明かりが点灯し、中からロックをはずす音がした。
百々は、スマホと御守りを確認するように、ポケットの外から手を当てた。
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