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百々は、恐れをぐっと飲み干した。
史生を連れて帰らなければならない。
できることなら、弘雄がしようとしていることを、止めなければならない。
この世と黄泉路を繋げてはならない。
「東雲さん、ここまで送っていただいてありがとうございました。」
百々は、東雲に礼を言い、ここに残る旨を伝えた。
弘雄が嬉々としてスリッパを用意する。
「そうですか。自分、しばらくこの周辺を見回ってますんで、何かありましたら。」
「はい。」
東雲は、では、と弘雄に頭を下げて一歩下がった。
百々は、一歩前に出る。
二人の背後でドアが閉まる。
弘雄がドアの鍵をかけた。
「さあ、あがって!狭くて恥ずかしいけれど。大丈夫、あの女には何も言わせないから。」
そうだった、弘雄の母親もいるのだ、会わないといけないだろうか。
いや、それより、弘雄が史生をここに連れ込んだことを、母親は知っているのだろうか。
家の中は、しんと静まり返っていた。
百々は、お邪魔しますと、靴を脱いであがった。
もう後戻りはできないーー
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