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廊下を案内される百々の鼻が、不快な臭いを捉える。
生ゴミが溜まっているのだろうか。
いまだ気配のない弘雄の母親が、ごみ出しすらしていないのだろうか。
「ここがリビング。と言っても、ダイニングと一緒みたいなもんで、狭くて申し訳ないね。」
百々の目に、弘雄は上機嫌に見える。
それほど百々の来訪が嬉しいのだろうか。
「あの・・・お母さんは?」
「ああ、あの女ね。」
初めて会ったときも、弘雄は母親のことを「あの女」としか呼ばない。
そこに、母子の愛情はないように感じられた。
「ほら、四屋敷の正当な後継者云々のとんでもない中傷をしただろう?だから、二度とそんなことをしないよう、厳しく叱ったんだ。」
罰も与えておいたから、許さなくてもいいけれど、できたら水に流してもらえないかなと言われ、百々はぎょっとする。
叱るだけならともかく、罰を与えるとは、弘雄は一体実の母親に何をしたというのだろう。
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