境界の攻防の果てに

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「!!」 百々は、弾かれたように顔をあげた。 充血して濁った弘雄の目と、視線が合う。 「・・・どういうことですか。」 にたり。 弘雄の口が、大きく。 頬まで裂けたかのように大きく長く引き伸ばされ、口角が上がる。 黄ばんだ歯がのぞく。 「百々ちゃん、四屋敷の後継者なんだろう?だったら、神様にお祈りして何でも叶えてもらえるんだよな?」 そんなわけはない。 四屋敷を継いで在巫女となったとして、それは神の力に願い事を叶えてもらうためではない。 確かに祈りは捧げる。 乞い願い、力をほんの少しわけてもらう。 願うとしたら、その力が正しく善き流れを保てるようにだ。 我欲を満たすことも、無理な願いを通すこともしない。 一歩間違えば、四屋敷の女とてただの人間、どのようなしっぺ返しに遭うかわからないのだ。 それを、弘雄にどう説明すればいいのか、百々は言葉を探した。
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