境界の攻防の果てに

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「あの穀潰しは、酒を飲んでぐちぐちねちねちと管を巻くことしか出来ないウジ虫野郎だったから、自分が継げなかった四屋敷のことを何十回も何百回も聞かせてくれたんだよ、俺に。」 あの家を継げば、神様に頼んでどんなことも思うがまま。 すべての神社から金が集まる、悠々自適な暮らしができる。 善雄が弘雄に語ってきたであろう内容に、思わず百々は叫んだ。 「そんなわけないじゃない!全部嘘よ!」 自分達在巫女の務めなど、そこには一筋も触れられていない。 ただ継ぎたい、長男だから、働かなくても暮らしていける、そんな一方的かつ自分にのみ都合のいい思考だけが一人歩きし、熱望するあまり過剰な錯覚と思い込みで覆われているような主張だった。 「まあ、俺もね、そんなことは鵜呑みにしなかったよ。」 そりゃあそうだよなあと、弘雄はにたにたとしている。 「人生、そこまで都合のいいことばかりじゃない。そんなことくらい知っている。だったら、俺のクソみたいな出生と生育の黒歴史はなんなんだってな。」
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