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上りきると、ドアの数から部屋数は3つ。
「ここが俺の部屋。向かい側がばばあ。奥が、物置兼八重ちゃんの部屋だった。クソどもは、八重ちゃんを物置にしてる部屋に住まわせてたんだよ。」
悔しそうに吐き捨てる弘雄。
この家で、八重はまったく幸せではなかった。
それを目の当たりにし、百々は悲しくなった。
四屋敷での生活が幸せであればあるほど、八重にとってここは地獄だったことだろう。
「飯を食わせて住まわせてりゃ虐待じゃねえとか、バカじゃねえかと思った。思ったのに、俺はまだガキで八重ちゃんを庇ってやれなかった。俺が大人になるまで待っていてくれたら、ここからクソどもを追い出してやったのに。」
弘雄は八重の味方だった。
それだけは、きっとありがたいことだったのだろうと百々は思う。
かといって、それはほんのわずかだ。
今の弘雄は八重が生きていたら絶対に望まない姿だ。
八重の部屋だったというドアの前で、弘雄が足を止めて振り返る。
「荷物、ここに置いて。それと、ポケットの中身、出して。」
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