境界の攻防の果てに

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百々は、血の気が引くのを感じた。 百々をじっと見つめる弘雄の視線が冷たい。 疑われているのは明らかだった。 「早くしろよー!!」 怒鳴りつけられ、百々は身がすくんだ。 すると、香佑焔の声が頭の中に響く。 『かまわん。私が状況を一子に伝える。一子からあの警察官に連絡させる。』 お願いね、香佑焔ーー 今ここで抵抗して、史生を確認できないのも、自分が身動きできなくなるのもまずかった。 百々は、ずっと斜め掛けしてここに来てからも肌身離さずもってきたバッグを床に下ろした。 ポケットの中から、スマホと御守り、ハンカチを取り出して見せる。 「これはいらないよね。必要なら、俺のを貸してあげるから。」 にっこり笑った弘雄は、スマホを階段の下に放り投げた。 ついて、御守りにも手を伸ばす弘雄に、百々が言い返した。 「こ、これがなかったら、私、何もできなくなるの!ま、まだ修行中だから!ほ、ほら、普通の御守りでしょ!」 弘雄は百々の手の中の御守りを掴んで厚さや固さを確認し、特に何も仕掛けられていないとわかったからか、返してくれた。
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