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百々は、返された御守りを、急いでポケットに戻す。
気が変わったと取り上げられたら大変だ。
東雲との繋がりを絶たれたのは痛いが、きっと香佑焔がなんとかしてくれるーー
それだけが頼りだった。
「ここだよ。入って。」
弘雄がドアを開ける。
その瞬間、百々は襲ってきた冷気に立ちすくんだ。
2階だというのに、足の裏に感じるのは土だ。
いや、それよりも深い、底のない地の深淵が、突然口を開けて自分を飲み込もうとしているような感覚に包まれたのだ。
これはーーここはーー
道が繋がりかけているーー!?
生者が住まう世界の空気ではなかった。
もはや、疑いの余地はなかった。
これは黄泉の国の気配だ。
一度も足を踏み入れたことのない百々なのに、直感でわかった。
やはり、弘雄は何かしたのだ。
ここを黄泉に繋げるための何かを。
暗かった部屋の明かりのスイッチを、弘雄がつける。
そこに現れた光景に、百々は叫んだ。
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