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「ほら、失敗したら八重ちゃんに悪いし、百々ちゃんだって嫌だろう?」
さも当然のことのように言う弘雄に、百々は史生の体を抱き締めるしかなかった。
きっと、ただの死骸ではないのだ。
失敗しないよう練習したのであれば。
おそらく頭と体をすげ替えている。
百々は、歯をガチガチ鳴らした。
そも、神道にとって死は穢れに通じる。
ここにあるのは、弘雄によって理不尽に命を奪われてきた多くの獣たちの亡骸だ。
そして、ある意味黄泉の国の住人は穢れと見なされている。
神話では、黄泉の国から戻った伊邪那岐命は、その身についた穢れを落とすために水に入った。
ちなみに、顔を洗った時に流れ落ちた神が、天照大神であり、月読命であり、素戔嗚尊である。
もしや、この動物たちの亡骸をもって、黄泉路に繋げようとしているのだろうか。
だが、この世のものならぬ冷気は、もっと違うところから漏れてきていた。
史生を抱き締めながら、百々はその冷気の出所を探った。
探って、そして、それは在った。
史生のすぐ側に。
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