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「これ・・・これ・・・」
何ということをしたのだ、この男はーー
百々は体が震えるのを抑えることが出来なかった。
そんな百々を見て弘雄は、わかってくれたんだねと嬉しそうに笑った。
「そうなんだよ!百々ちゃんを助けたくて、少しでも八重ちゃんを楽に出させてあげたくて、削って持ってきたんだ。」
千曳の岩をーー黄泉津平坂を塞ぐものを。
岩自体を誰にも知られずに壊すことなど出来ない。
それに、岩の下に直接穴が空いているわけでもない。
ただ、繋がっているのだ。
現世と黄泉の境目、境界、結界。
その一部をここに持ってくることで、弘雄は自宅にも黄泉路への出入り口を作ろうとしたのだろう。
石を見つめる百々は、それだけではないものを感じた。
頭に浮かんだのは、積み重なるイメージ。
「賽(さい)の河原・・・」
「そうなんだよ!これは楽だったんだよ!」
はしゃぐように、弘雄が肯定した。
百々が正しく引き当てることが、愉快でたまらないらしい。
さすが四屋敷の後継者、八重ちゃんを呼んでくれる子だと、一人満足している。
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