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この地は、その罔象女神の気配が強い。
よほど、この土地で人々に親しまれ、祈られ、感謝されてきたのだろう。
人の信仰の数は、元々の神の力をさらに強くも弱くもする。
多くの感謝を捧げられる神の力は増大し、人々から忘れられた神の力は徐々に薄まり、社自体が消えていく。
そう考えると、百々はほんの少しだけ胸の中、心の中が暖かくなった。
ああーーここでたくさんの人から愛されている罔象女神様は、とても穏やかで深くて豊かだーー
だから、曾祖母の一子はこの神社を選んだのかもしれない。
県内の他の神社でも、罔象女神を祀っているところはいくつもある。
その中からここを選んだ理由。
これほどまで罔象女神の力に満ちている神社は、県内にはないのだろう。
「罔象女神様。」
百々は、障子戸の閉まっている本殿に語りかけた。
当然、返事はない。
百々を取り巻く力が、百々の言葉を理解しているかどうかもあやしい。
それでも、百々は語りかけ続けた。
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