不思議な腕時計

2/12
1人が本棚に入れています
本棚に追加
/12ページ
身寄りのない僕は児童養護施設にいて、同じ境遇の子供たちと共同生活をしていた。 僕は中学3年生になっていて、冬休みは施設で新年を迎えた。 元旦になると園長先生からお年玉をもらうことができて、僕は毎年このお年玉が楽しみだった。 お年玉はぽち袋で受け取って、金額は5000円だった。 僕は、どうしても買いたいものがあって、1月4日になってから買い物に出かけた。 施設からバスで駅に行き、駅前商店街を歩いて進むと、その外れに目的の小さなアンティークショップがある。 お店の中に入ると、奥のカウンターに白髪の老紳士が椅子に座って本を読んでいるようだった。 「いらっしゃい!」 老紳士から声をかけられて僕は、 「こんにちは!」 と返事をした。 他にお客の姿はなくて、店内は静まり返っていた。 僕は以前にもこの店に来たことがあって、その時に見つけた腕時計が気になっていた。 以前の記憶をたどりながら腕時計を探したが、商品の陳列が変わっているようで、なかなか見つからなかった。 「何かお探しですか?」 老紳士から声をかけられて、僕は腕時計のことを聞いてみることにした。 「前に来たときに腕時計を見つけたのですが、もうありませんか?」 「あぁ、たぶんあれじゃろう!」 こう言うと老紳士は店の奥から腕時計を持ってきてくれた。 その腕時計は、僕が以前見たものに間違いはないようで、何とも不思議な腕時計だった。
/12ページ

最初のコメントを投稿しよう!