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身寄りのない僕は児童養護施設にいて、同じ境遇の子供たちと共同生活をしていた。
僕は中学3年生になっていて、冬休みは施設で新年を迎えた。
元旦になると園長先生からお年玉をもらうことができて、僕は毎年このお年玉が楽しみだった。
お年玉はぽち袋で受け取って、金額は5000円だった。
僕は、どうしても買いたいものがあって、1月4日になってから買い物に出かけた。
施設からバスで駅に行き、駅前商店街を歩いて進むと、その外れに目的の小さなアンティークショップがある。
お店の中に入ると、奥のカウンターに白髪の老紳士が椅子に座って本を読んでいるようだった。
「いらっしゃい!」
老紳士から声をかけられて僕は、
「こんにちは!」
と返事をした。
他にお客の姿はなくて、店内は静まり返っていた。
僕は以前にもこの店に来たことがあって、その時に見つけた腕時計が気になっていた。
以前の記憶をたどりながら腕時計を探したが、商品の陳列が変わっているようで、なかなか見つからなかった。
「何かお探しですか?」
老紳士から声をかけられて、僕は腕時計のことを聞いてみることにした。
「前に来たときに腕時計を見つけたのですが、もうありませんか?」
「あぁ、たぶんあれじゃろう!」
こう言うと老紳士は店の奥から腕時計を持ってきてくれた。
その腕時計は、僕が以前見たものに間違いはないようで、何とも不思議な腕時計だった。
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