第1話 新生活

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第1話 新生活

ーーカチャリ。 私のティーカップが小さな音を奏でました。 結婚記念に奮発して買った、旦那とお揃いの品です。 白地に蒼い花模様があしらわれ、取っ手は金で縁取り。 値段については忘れました、全力で。 ーーサァァアッ。 窓の外には草原が広がっていて、風が吹く度にユラユラと揺れます。 なんとも心地よい、悠久のひととき。 特に子育て世代の私には贅沢過ぎる時間です。 「ケティはわかるのよ。こーゆーのがオトナの時間なのよね!」 テーブル向かいに座っている長女のカトリーナ。 ちょっと背伸び気味のコメントをしてますね。 上の長男のリアムはカゴ片手に虫の収集してますから、女の子ってのはおませさんです。 「ママ、ケティもそれで飲みたいの!」 「このカップですか? それはダメです」 「ケチィ! パパもダメって言うの、どうしてなの?」 「これはね、大事な人と買った特別なものなんで。ケティもそんな人を見つけたら買うんですよ」 「ふぅん。やっぱりママはパパが大好きなのね」 ーーエッッフンエフン! 唐突に止めていただきたい。 いやまぁ、愛してはいますが……実の子に問われると気恥ずかしいですね。 「きかせて! パパとのお話!」     
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