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「えーっとですね、パパとはこの街で知り合って、絵のモデルを……」
「ちがうの、おっきな街でのお話!」
「おっきな街って、王都の事ですか?」
「それ、オートの話!」
いずれこんな話をする日が来るとは思ってましたが、まさかそれが今日だとは予想外でした。
ですが、正直に洗いざらい話す気はありません。
こっ恥ずかしい失敗とか闇に葬りたいですからね。
私は馴れ初めをドラマ仕立てにするべく、頭の中でかつての記憶を辿ったのでした。
ーーーー
ーー
「アリシアさん、今日からよろしくね」
「ええ、こちらこそ。たいして役に立ちませんが」
ここはルーノさんの新居です。
運び入れた荷物がイーゼルや画材くらいしかないので、悲しくなるほどの広さがあります。
奥にポツンと置かれたベッドが哀愁を漂わせています。
後で家具を買い込む必要がありますね。
「じゃあルーノさん、私はこの辺で失礼します。何かあったら声かけてくださいね」
「ありがとう。ゆっくり休んでてー」
バタン……。
ドアの閉まる、軽めの音が尾を引きました。
そう、私たちは同居ではありません。
隣にもう1部屋借りていて、そこが私の新居となります。
「こっちはこっちで、えらく殺風景ですな」
こちらも間取りは同じ、ガランとしてるのも同じ。
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