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「ルーノさん。指導はありがたいですけど、私は別に画家になる気はありませんよ」
「そうかい? でもなぁ、これを放置するのはなぁ……」
「いいんです! ほら、見積もりができたみたいですよ!」
仕立屋さんが安定したスマイルで、こちらにやってきました。
騒がしい客を前にしてもブレませんね、ほんとプロですわ。
「詳細についてお話させてください。まずは上着の裏地についてですが……」
「あー、良いですよ。上手くやってください」
「それは、私どもにご一任くださるということでしょうか?」
「うん、ヘンテコにならなきゃ何でもいいからー」
「ルーノさん! そんないい加減な!」
「じゃあよろしくー。アリシアさん、画材屋いこッ」
逃げるようにしてルーノさんはお店を飛び出していきました。
そこまで服屋さんが苦手ですか?
まぁ、おしゃれな美男美女だらけで気後れはしますけど、それは過剰反応では?
ひとまず店員さんに頭を下げ、逃亡者の後を追いました。
画材屋さんは路地に少し入った所にあります。
ジメっとしてる感じが却って面白味を演出してるお店。
その中にルーノさんは既に入り込んでました。
本当に頭には絵の事しか詰まって無いのでしょうね。
「デートっぽくなんか、なりそうに無いですね」
実は出発前はちょっと期待してました。
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