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第3話 ビッグベビィ
公爵邸。
ただ今、その大広間は賑わっていた。
数々の料理が用意され、歓談する身なりの良い貴婦人たち、会話術で牽制し合う領主の面々。
本日は公子、つまり公爵の息子の社交界デビューの日。
その場を借りて、公爵はとあるイベントを用意していた。
「さて皆さま方! こちらへ一度ご注目あれ!」
野太い声が会場に響く。
何事かと、客人たちは興味深げにそちらを見た。
「本日は2枚の絵をご用意した。無名ながらも才気ほとばしる芸術をご堪能いただこう!」
公爵が立っている周りは、飾りも椅子も一切が無いスペースだ。
そこに2枚の絵が飾られた。
どちらもアリシアをモデルに、ルーノが描いたものである。
観客からはどよめきが起き、さざ波のように広がっていく。
「宵闇の魔女……なんという圧迫感か」
「隣の『花を愛でる女』も素晴らしい。延々と眺め続けていたいですな」
「……モデルの女性が同一人物?! 信じられん、別人のようではないですか!」
「欲しい、何としても1枚欲しい」
「公爵閣下、なんという名の画家なのですか?!」
予想を上回る反響に、公爵は口の端を歪ませた。
自尊心が程よくくすぐられているのだ。
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