気持ちの変化

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 今は『moon』のモデルなので、女の子しか演じることができないが、もっともっと他の自分も演じてみたい。  そんな気持ちがひなたの中に生まれてきたのだ。  当初は月野のいる事務所になど誘われても行くものかと思っていたひなただったが、どんどん気持ちは揺れ動いていった。  ひなたは月野と食事をしたときに、思い切ってそのことを彼に話してみた。 「役者の仕事がしてみたいのか?」  月野が食後のコーヒーを飲みながら聞いてくる。 「……そう、なのかな? よく分からないけど……。なんか自分とは違う人間を演じてみたいっていうか。ほら今は女の子を演じているわけだけど、それだけじゃなくって、いろいろな立場を演じてみたい」  躊躇いながらそう答えると、月野はひなたをじっと見た。 「そうか……」 「オレ、無謀なこと言ってるのかな……?」 「いや。そうだな……モデルの仕事もあとひと月だし、それをやり終えたらもう一度いっしょに考えよう」 「はい……」 「そんな不安そうな顔するな。ひなたらしくない。大丈夫。オレもちゃんと考えるから」  月野はそう言うと、ポンとひなたの頭をやさしくたたいた。 「うん」  月野の笑顔を見ていると、勇気が湧いてくるひなただった。  そしてもう一つ、ひなたの中で変わっていった感情がある。  それは月野への思いだった。
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