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思い出した。でも……。
「あの、なにか?」
どうしてさっきの審査員がこんなところに。
ひなたは不安な思いに駆られた。
「朝比奈ひなた、おまえ男だろ」
目の前の男にいきなり真実を告げられ、ひなたは固まってしまった。
「――――」
「うまく化けたな」
月野と名乗った男に、無遠慮な視線で舐めるように見られて、ひなたは観念した。
「さっきの優勝は取り消しってことですか?」
ようやくそれだけを口にする。
モデルの仕事はしかたないとしても、賞金の百万円は惜しい。せめて半分でもいいからもらえないかと思ってしまう自分がいじましい。
しかし月野は、ひなたの問いかけには答えずに、冷たい声で言い放った。
「おまえ、モデルの仕事なめてるだろ?」
「は?」
「モデルの仕事なんて、ちょっとポーズをとってニッコリ笑っていたらいい、楽なもんだって」
「…………」
図星だった。
コンビニやファストフード店でのバイトに比べたら、モデルなんか楽勝だって、確かにそう思っていた。
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