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……皮肉なものだと思う。
結婚していた当時、妻は少し異常なほど月野に執着した。
彼女の愛情は重すぎて、月野には理解できなかった。
でも今は少しだけ彼女の気持ちが分かる気がする。
今まで出会った誰とも比べ物にならないくらい、ひなたを愛しているから。
ひなたと出会って、初めて本当の恋というものを知ったみたいだな、オレは。
だからこそ月野は気持ちをセーブしているのだ。
今でさえギリギリなくらいひなたのことを愛しているのに、体を繋いでしまったら、オレはひなたに執着してしまう。
彼がやがて月野の腕の中からいなくなってしまうことに、耐えられなくなる。
自分がこんなに臆病だったなんて、今まで知らなかったよ……。
眩しいほどの笑顔を浮かべるひなたを見つめながら、月野は狂おしく思う。
おまえを一生離したくない……ひなた。
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