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気持ちの変化
忙しくしているうちに夏休みに入り、ひなたの暮らしは少し余裕のあるものになった。
それでも、モデルの仕事だけではまだまだ生活が苦しいので、コンビニのバイトを三時間ほど入れた。
本当はバイトの時間をもう少し増やしたかったのだが、月野にとめられたのだ。
「体調管理もモデルの仕事のうちだ。この前みたいに倒れるようじゃ失格だからな。あと寝不足も厳禁だ」
以前までのひなたなら、月野の言うことを素直に聞く気にはなれなかっただろうが、彼のやさしさを知った今は違う。
……そういうわけで、夏休みはモデル業を中心に過ぎていった。
そして、そんなふうにモデルの仕事を中心とした生活をしているうちに、ひなたの気持ちに変化が生まれてきた。
お金のためと月野への意地のため、モデルをしていたひなただったが、だんだんモデルの仕事が楽しくなってきた。……いや、正しく言えば、『モデルの女の子を演じている』のが楽しいのだ。
朝比奈ひなたという高校二年の少年とは違う自分を演じることが。
それに撮影の背景によって『演じる女の子』も変わる。
大人っぽい衣装のときと、フリルがついた純白のワンピースのときでは、表情や仕草も変わってくる。
その変化を演じるのもまた楽しい。
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